ベーカリーから

住んでいる町で
一番美味しいバゲットが食せる店に
出向いた

メキシコ人たちは週末
家族や仲間たちと連れ添って
朝食やブランチをするのが
大好きである

カフェ併設の店内は
8時半のオープンでは
さすがに人影もないが
9時をまわると
席がほぼ埋まる状況である

ここはバゲットが本当に美味しい
本物に近い味がする

ハリスコ州にはフランス移民も多く
確かにフランスで定番の
バゲットが街中に出回っている

しかし、本当に美味しいパンは
なかなかないものなのだ

パンそのものを食べる文化が
メキシコには
それほど根強くあるわけではない

もちろんパンは食べられるが
パンの味を味わって食べるというような
習慣があまりないのは事実である

その代わりがトルティージャと呼ばれる
タコスを巻いて食べる
小麦粉やトウモロコシ粉などをベースにして
薄めに焼いた生地が
主食である

ベーカリーのお客には
フランス人も見受けられ
彼らにとってもこの味が
一番本物に近いのだなということを
考えさせられる

やはり
本物を探す人のところに
本物は表れるのである

そして
この店でフランス人を見かける度に

私は自分の舌が
まだフランスの味を覚えていることを
少し誇らしげに思うのである

ただのベーカリーかもしれないが
私にとっては
そんな心地よい朝を始められる
貴重な場所なのである

La Carrière -Mariko