テキーラの真実とルブタン

メキシコと言えばと聞くと
日本の多くの人が
テキーラという飲み物を
例として挙げる

そして飲み方も
酔っぱらうために
ショットで一気飲みをするものと
信じられている

しかし
本当のテキーラは
そのような形で
メキシコの生活には
存在しない

もちろん
パーティの場で
ショットで飲み合うことも
あるのは事実だが

本当は
テキーラは
大人が嗜む
美味しくて
ある程度値段の張る
美味しいお酒なのである

日本で言うと
焼酎の仲間である
要は蒸留酒ということだ

竜舌蘭と呼ばれるサボテンがあり
中でもAgave Azulと呼ばれる種類のうち
ハリスコ州の周辺で育ったものを使った
お酒だけが
テキーラと呼ばれるのである

同じような定義には
フランスのChampagneがあり
地理的な制限をクリアしたものでなければ
Champagneと呼べないのである

Champagneと比べると
ずいぶんお粗末な扱いを受けている
テキーラだが

メキシコでは本当に良いテキーラは
皆、食後や食事の楽しみに
嗜むお酒として
好まれている

日本の焼酎の原酒をご存知だろうか
テキーラは薄めずに販売しているため
焼酎の原酒並みの
アルコール度数なので
強いお酒の印象を受けるのだ

日本人は焼酎に慣れているので
本当にお酒が好きな人には
美味しいテキーラは
すぐにわかると言われている

ロックで飲む人も多いが
アルコール度数が強いため
炭酸割などで飲む人もいる

もしテキーラを飲む機会に恵まれたなら
どうか
ショットでの乾杯は
ご遠慮いただきたい

本当に美味しいテキーラは
高貴で熟成された
すっきりとした味わい深いお酒である

私もアルコールは強くないのだが

テキーラにスパークリングウォーターを入れ
少量ずつ
食事の後半で飲むのは
本当に美味しいものである

日本人は海外への憧れが強いせいか
ステレオタイプに
なりがちである

テキーラも
安くて酔っぱらうためのお酒ではなく
大人の嗜みとして
飲むものであることを
知っていただければと
願ってやまないのである

そして、このように

お酒一つとっても
自分が知っていることと
真実が違うということも
あるものなのだ

さらに
時間と共に
流行り廃りもあり
変わっていくものなのだ

自分の知識が
常に正しいと思いこまないことは
とても大切なことである

特に情報があふれる今の世の中
真実を見極める目は
必要な能力の一つでもある

私も常に
そうした見る目を
鍛えてきたつもりだが

これから
さらに
研ぎ澄まされたものが
必要になるのではないかと
思うのだ

テキーラは一例であるが

まだまだ
私が知っていると勘違いをしていることが
世の中にはたくさんあるのかもしれないと
疑問を持ちながら
生きて行くと

違った目で
世界を見る目を
育てることができる

どうか
そういう気持ちを忘れないで
頂ければと思う

異文化理解について学ぶ際
このような視点を持つことで
新たな発見が増えるからである

異文化理解とは
そういうことなのだ

違う考え方同士が
ぶつかり合うことで
理解が深まっていくものなのである

さらに分かりやすい例として
ハイヒールを挙げよう

ハイヒールが
足に悪いという世の中の流れの一方

Christian Louboutinは
女性を解放するものとしての
ハイヒールを主張している
彼は快適さなど
ハイヒールに求めていないと
明言している

足に悪いか良いかという視点ではなく
美しいかどうか
表現するツールとしての
ハイヒールを
彼は主張しているのである

物を見る目が違うと
意見がここまで異なるのである

そして
今の世の中

どちらの情報も
インターネット上に存在するのである

私自身
この記事ですら
英語やフランス語記事が
見当たらなかったため

私にはLouboutin氏が
どのように語ったのか
真実が分からないと
思っているのも事実であるが

どちらからの情報しか
入手できなかったとしよう

そうすると
双方の主張を
理解することなく
単になるほどね、と
ニュースや記事を見て
それを信じることになってしまいかねない

常に正しいと思いこまないことは
とても大切なことなのだ

もう一度、書きたい

特に情報があふれる今の世の中
真実を見極める目は
必要な能力の一つでもある

物事を多角的に見ることの
大切さが
テキーラとルブタンの例で
お分かりいただけたのではないかと思う

La Carrière -Mariko

*Louboutin氏の記事は2020年3月28日AFP通信社記事より
https://www.afpbb.com/articles/-/3271755