ああ、メキシコよ(2)

乗ったフライトは
確かにメキシコシティ行きであった

機長のアナウンスも
メキシコシティ行きで
飛行時間は45分と
明確に言っていた

にもかかわらず

各座席事に設置された
目の前のスクリーンは
ティフアナ行きと
表示されている

そして
それに
誰かが文句を言うこともない

なぜなら
分かり切ったことなのだ

私たちは、メキシコシティへ向かっているのだ

だからこのフライトに乗っているし
そしてアナウンスもそう言っている
現にそうでなければ
搭乗券がエラー反応を起こすであろう

こういうところが
私は嫌いじゃない
むしろ
好きになる

いい加減であることが
好きだと言っているのではなく

細かいことに気を使いすぎて
クレームやコンプレインを発生させ
全体のムードを悪くしたり
不安を増幅させたりするような
人がいないことが
好きなのである

私が日本に帰る度に
数日すると
息苦しいという思いに
つぶされそうになる

それは
細やかな気遣いの素晴らしさとも言えるが
そこで不平や不満を言っても
状況が変わるわけではないことに
いちいち気を配ったり
誰かの目を気にすることを
強制させられるところである

決して
このメキシコの状況が
素晴らしいわけではなく

ちゃんと訂正しなさいと
プロとしての仕事の視線で
言いたくなる気持ちはあるが

だからなんなのだと
言いたくなる気持ちも
十分わかるのである

そして
こうした仕事に対しても
笑顔で笑って
仕方ないよねと言える

そういう
文化的背景が
好きなのだ

最悪の状態のときに
ネガティブな気持ちになることもある
でもそんなときに
ネガティブなことばかりに
集中していると
本当に
ネガティブなことしか起こらない

そうではなく
その場をいかに楽しむか
与えられた状況を
どのように味わうのか

その感覚が
日本人には足りないと
思う

だから私は
ラテンの国が好きなのだ

そして
こんなトラブルばかりの毎日が
愛しくて仕方がないのである

La Carrière -Mariko