貴女は芸術家になるべきだ

メキシコにも鍼治療がある
ただし
日本や韓国、中国と違い
免許制度があるわけではない

すべて自己責任での
治療ということになる

韓国出身の先生は
どこかしら
ドラゴンボールに出てくる
仙人に似た雰囲気で
いつも
訛りのあるスペイン語を話す

その先生にある日突然言われた

貴女はオフィスで働くのをやめて
今すぐ芸術家の道を行くべきだ
貴女の手がそう言っている

正直驚きを隠せなかった

確かに私の通っている鍼では
耳と手に鍼を打つ
右手に鍼を打ちながら
先生が私にそう言ったのだ

貴女の手は芸術家の手だ
だから
オフィスで働くよりも
もっと向いている仕事がある
絵を描くとか写真を撮るとか
字を書くとか
本を出すとか
デザイナーとか

そういう仕事をしなさい
ストレスが一気に減るはずだ

もちろん
人生はそう簡単にはいかないから
仕事を続けないといけないのだろうけれど

とにかく
お勧めするよ
今からでも、芸術家になるべきだ

と、言われたのである

まさか鍼でそんなことを言われるとは
思ってもおらず
驚きを隠せなかったが

一方でやはり
ハイヒールコーチという道を志して
よかったのかもしれないとも思う

コーチングの話を伺った際に
ASAMIさんが私に伝えて下さった言葉を思い出す

表現が好きとおっしゃっていたので
Marikoさんには向いていると思います

という言葉である

表現、というのは
ASAMI-Parisのレッスンの一部でもあるが
指先、手首、腕を使った表現のことである

過去、パリ在住時代
オートクチュールレッスンを受けている際に
いつも音楽に合わせて手と指先を美しく動かし
表現することが好きであった
そのことをASAMIさんは言っているのである

私にとってハイヒールは
もしかすると
芸術家として表現のツールになりうるのかもしれないと
ふと
そんな夢物語を描いた
鍼治療の時間であった

La Carrière -Mariko