停まらないエレベーター

私の住んでいる建物では
エレベーターに
住民向けの告知が
公示される

ある日
セキュリティを上げるため
エレベーターを指紋認証にすると
記されていた

指紋で自分の住む階と
共用階に出入りできるよう
指紋を登録することになった

しかし

登録したはいいが
うまく動かない人が
たくさんいるようである

この事態に
思わず
笑ってしまった

かく言う私も
その中の一人であった

結局
私は指紋を登録するために
管理事務所なる場所に
実に4度も通った

夫の指紋登録は2度でできた

翌日新しいアナウンスがなされた

あまりの問題の多さに加え
家に出入りをするであろう
家庭教師や家事手伝い業者が
多数あるという要望から

各家ごとに
カードキーを
2枚購入することができるようになる
とのことであった

結局事務所に4度も通ったが
私の指紋認証はうまくいかなかった為
結果的にカードキーを使うことになった

そして
このカードキーを手に入れるために
また何度も通うことになるのだ

そして
エレベーターの指紋認証が始まった日

同じ問題を抱えた住民たちが
マンションの入り口の受付で
私は何階に住んでいます、開けてください
何階で降りれるようにしてください
などと
マスターキーを持っているであろう
セキュリティに
皆、列をなして群がっていた

正直に言うと
少しチャレンジングで
頑張ったらできそうなことを
敢えてトライするのは
良いことだと思っているが

このように
生活に密着するような場面で
それは御免である

約2週間を経て
私はカードキーで出入りできるようになり
苦労の末
自力で家に帰れるようになった

それまでの間
指紋認証がうまくいかないために
自分の住んでいる階層を通り過ぎたり
うまくいくまで
エレベーターに乗り続けるなどを
何度も繰り返した

今となっては笑い話だが
正直これには
疲れてしまった

そもそも
我が家のエレベーターは
欠陥である

なぜなら
各階の呼び出しボタンが
昇りか下りの
どちらか1つしかないからである

地下駐車場から住居階への上下には
確かにそれだけで十分ではあるが
マンションの共用スペースでは
上に行く住民もいれば
下に行く住民もいるのだ

共用スペースから
エレベーターを呼ぶ時は
運を天に任せるしかない

私はいつ部屋に帰れるのか

早く戻りたいという気持ちの
苦笑いと
この建物の設計をした人は
あまり考えずに作ったなという
いかにも
メキシコらしいストーリーに
エレベーターに乗る度に
笑いがこみあげてくるのである

我が家は快適だが
この家のオーナーでなくてよかったと
心から思っていることは
家主には秘密である

La Carrière -Mariko