なぜか
私にはスペイン語の愛称がある
その名も、ナタリアだ
ある日
メキシコ人の同僚が
せっかくだからスペイン語の名前を持とうよ
と言ったのがきっかけである
スペイン語圏では
Mariko
は、男の人を想像させる名前である
スターバックスに入ると
名前を必ず聞かれるのだが
毎回、スペルを言うのは面倒である
確かに、スペイン語の愛称を持つのも
悪くない提案だった
もうすぐ娘が生まれるという部下が
付けたい名前のリストを作っていた
その中の一つが
ナタリアであった
しかしながら
彼の親戚が
ほぼ同じ時期に生まれた子どもに
ナタリアと名付けたことから
彼は、この名前を諦めざるを得なくなった
そして
私の愛称になったのである
ナタリアと呼ばれ始めてから
二年が経った頃
部下に、二人目の娘ができた
彼は今度こそナタリアと名付けると
決めていた
そして世の中には
不思議な偶然というものがあり
彼の娘は
私と同じ誕生日に
この世に生を受けたのである
ナタリアとは
神の誕生日という言葉が語源とされている
かくして
本物のナタリアと
日本人のナタリアは
同じ日に、四十年違いで誕生したことになる
そして
私はこの名前に一層
愛着を感じるのであった
同じ日に生まれたナタリアが
ハイヒールを身に着ける日も
来るに違いないと
なぜか確信してしまうのであった
La Carrière -Mariko