SANT PAUレストランにて

人には懐かしいと思う
場所やにおい
食べ物が
それぞれに、ある

私にもそういう味が
たくさんあるが

レストランも
懐かしさを感じる
場所の一つである

今はオリジナルのお店は
閉店してしまっているが
スペインは
カタルーニャ地方にあった
サンパウ、というレストランがある

そのレストランに
行った記憶は
かなり遠くにさかのぼる

バルセロナ駐在時代の話であるから
もうそれは
10年以上前に
遡ることになる

そのレストランは
今は実は
日本にあり

先日足を運ぶ機会に
恵まれた

COVID禍において
客足が
鈍っている中

接客対応も
抜かりがなく
素晴らしい
食事の時間であった

一品一品を
見るたびに思うのは
料理は
最も儚い芸術品の一つであると
いうことだ

出来上がりまで
相当の時間を要するが
食べるのは
一瞬である

昔懐かしい
レストランの思い出と
美しい一皿に
心をゆだねる
素晴らしい時間が過ぎて行った

そして
こういうレストランにこそ
ハイヒールが似合う

ハイヒールでお店へ行くことは
ある意味
礼儀に近いものかもしれないと
思う

料理人たちが
魂を込めた一皿に
食べる方も
本気で向き合えば

料理の中に込められた
メッセージや思いを
より、くみ取ることが
できるのかもしれない

足元の
ルブタンが久しぶりに
嬉しそうだったと思うのは
私だけだろうか

今は生活基盤を
作ることに
集中してしまっており

私自身を
喜ばせることを
忘れていたことに
気付かされた夜であった

サンパウレストランで
懐かしい思い出と
新しい気づきに出会った
素晴らしい経験であった

La Carrière -Mariko