物心ついたころから
スカートを身に着けなくなっていた
これには理由がある
幼いころ
初めて聞いた自分の声が
他の人のものと違い
ずいぶん低いものであった
おしとやかで明るく清らかな
ディズニー映画のお姫さまのような
美しい明るい声の
持ち主ではなかったのだ
周りの人たちの声が
いかに美しく
明るく、きれいなものかと考えると
無意識のうちに
自分が女として見られることを
排除したいと思うようになったのだ
パリという街に住み
ハイヒールと出会うまで
そう思い続けてきた
正確には
何度か、女性であることを活かすよう
考え方を変えるチャンスもあった
しかし
私の中では、どこかしら
嫌悪感を抱いていたのは事実である
ビジネスの世界において
女性であることを
不必要に主張する必要はない
でも
それを否定する必要はなかったのだと
今だから言える
女性だからというのが理由で
ビジネスの世界で不利になるのも
有利に扱われるのも
どちらも、大変腹が立つ
が
私の生物的な性別は女であり
心理的、社会的な性別も
女性であるということを
何も隠す必要はないのだ
おなかが出ていることや
太っていることなどを
気にかける風潮が日本にはあるが
世界の女性たちは
ありのままの自分を愛している人が多い
スペインでは出てきたお腹を
浮き輪と呼んでいた
そして
浮き輪を出して
夏は街を歩くのよと教えてくれた
私の仕事の相方だったマリアンヌは
歳を取ることで
美しくなるのよと言っていた
フランス人女性は、しわやそばかすも
その人の美しさを演出する道具だと教えてくれた
アルゼンチンの彼女は
白髪も私の一部だと言っていた
遺伝で得たものだから
何が悪いんだとも言っていた
ありのままの私を愛すべきであると
教えてくれたのは
世界中の女性である
一人の女性が美しく輝くときに
ディズニー映画のお姫さまのような
必ずしも
明るく、きれいな声である必要はないのだ
美しく魅せるためには
ありのままの自分を活かし
動作や発言に
意識を込めることだけで十分である
ハイヒールと出会ったことで
私はそのことを
身体を持って理解した
たとえ、パンツ姿であっても
ハイヒールは私の脚を美しい芸術品に変えてしまう
だから、芸術品となった脚が
残念な作品にならないよう
意思を込めた一歩を踏み出す必要がある
ちょっとした動作に心をこめる
そのことの難しさと大切さを
ハイヒールは教えてくれる
女性の性を開花させるための
一つの方法が
ハイヒールだと
私の人生を証拠に、断言したい
La Carrière -Mariko