雨の音を聞きながら

私の母親は
雨音を聞きながら
お湯に浸かるのが
好きなのだと
言っていた

雨粒が
ぽとん、ぽとんと
金属か何かに当たる音

それを聞きながら
湯船に身をゆだねるのだという

日本に帰ってきてから
毎日
お風呂に入れることが
一番の幸せでもある

私は大のお風呂好きで
熊本在住時代は
毎日
温泉に入ってから
帰宅していたほどである

残念ながら
ホテルのお風呂から
雨の音は聞こえないが

ベッドルームの窓を開け
そこから
雨音を聞いていると

とても懐かしいような
不思議な気持ちに、なる

つい二週間前までは
こんな風景は
想像もしていなかった景色である


東京の都会の真ん中で
私はホテルで
のんびりと時間を過ごしているのだ

忙しかった日々
出張三昧だった毎日
朝6時のフライトや
5時に起きてのコンサルティング

全てが
夢だったのではないかとさえ
感じてしまう

雨の音を聞きながら
私はまず
ここで
地に足を付けなければと
改めて妄想するのであった

ハイヒールで
街を歩く私

ハイヒールで
オフィスに登場する私

その姿を想像しながら
雨の音に耳を傾ける

来週はいよいよ
そんな日が
やってくるのである

自分が
どう見せたいのかを

そろそろ
考えなくてはならない時がきたのだと
心を固めるのであった

La Carrière -Mariko