朝の挨拶習慣

フランス時代
いつもオフィスに誰よりも先に出社している
同僚の男性がいた

私も朝は早めの出社を心がけていたが
それには理由がある

私の住んできた国は
ほぼ
ラテン系文化の国である

ほぼ、と書いたのは
オーストリアが
若干ゲルマン系文化も混ざっているためだが
彼らも歴史的には
ラテン系とのつながりの方が長く
根はラテン系なのである

ラテン系の国々は
オフィスに出社すると
まず
挨拶から朝が始まる

挨拶と言っても
おはようございますと言いながら
通り過ぎるような
簡単なものではない

親しい人にはキスとハグ
少なくとも握手か
ハイファイブ(ハイタッチのような感じ)を
しなければ
自分の席にたどり着けないのである

早く出社すれば
皆が挨拶に来てくれるから
というのが
その男性が
一番乗りで出社している理由であった

かく言う私も
皆が挨拶に来てくれる方が
気持がいいなと感じており
もともと朝早めの出社習慣があったが
早めに行くことの
理由が追加されたようなものである

バカンス前などは
必ず皆、帰る前に
さようなら、良いバカンスを
またね、素敵な休日を
などと言い合って
挨拶をするのである

ご想像にたやすいと思うが
バカンス明けの朝の挨拶は
いつもよりも
倍以上の時間がかかる

キスやハグをしながら
元気?
昨日は暑かったね
などとどうでもいいことを話すのが
当たり前となっているため

バカンス明けは
休みの間の出来事の話などで
盛り上がるのである

この挨拶の時間

私はとても好きな時間でもある

まず
一人一人の顔色が分かる
疲れていたり
ちょっと弱っていたりしないか
それとも何かあったのか
などということが
手に取るように
分かるのである

さらに
短い時間とはいえ
スタッフ全員が
必ず会話を交わす
からでもある

日本に帰ると
この習慣が
嘘だったのか、というように
静かすぎるオフィスが待っている

挨拶もあまりなく
静かなオフィスに
ひっそりと席に着く人が多い現実に
なんだかとても悲しくなることも
多々ある

毎朝言葉を交わし
スキンシップがあることで
人と人の距離は
確実に短くなる

今の日本に足りないのは
こういう習慣なのかもしれないと思う

COVIDの影響で
キスやハグ、握手が減りつつあるが
その代わりに、
肘と肘と付けて
挨拶をするようになった

意地でもスキンシップをするわけだ

ラテン系のこの
こだわりの強さに
ちょっと苦笑してしまうが

それくらい
人とのつながりを大事にする
この文化圏が
私は大好きである

La Carrière -Mariko