Long Peaceの物語

日本に帰った際に
人生の師の墓前に立った

あの日から
すでに
13年もの月日が
流れていた

私の人生の師は
哲学者であり
教育者であり
Heavy Smokerであった

彼が愛用していたのは
ロングピースという愛称を持つ
タバコであった

時代が流れ
嗜好が変わり

ピースのような
強いタバコを好む人は減った

インターネットで探してみるものの
なかなか1箱単位で販売し
すぐに手に入るものは
ほとんど見当たらず
1カートンでの販売がほとんどであった

検索の上位には
ロングピース、どこで、などがあがっており
入手することが
容易ではないという現実も
目の当たりにすることとなった

本音では
なんとしても手に入れたかったが
探しただけでも良しとしようと
心を決めて
彼の眠る墓地へ向かった

哲学者でもある彼は
Long Peaceを願って
このタバコを愛用していた
好きな野球球団は
広島カープ
それは市民球団だからだという

理屈なしに何かを語れない
そんな偏屈にも思える哲学者あがりの教育者が
私の人生の師匠である

墓地のある最寄り駅で
ふと
タバコ屋を探してみると
偶然にも
ロングピースを
箱売りしており
在庫も残っていた

導かれることもあるものだ

そんな気持ちでいっぱいになりながら
彼の霊前に向かった

感謝の気持ちにあふれるとはこういうことなのだ

しかしながら

私はSmokerではなく
タバコに火をつけた経験がないことに
封を開けてから
気が付いた

お彼岸のピークもすぎた墓地で
偶然にも通りがかったご家族に
火を借りることができ
タバコへ火をつける方法も
教わった

タバコ一本の火が
消え終わるまでの間
私は師にひたすら
語り続けた

長い人生はまだ続く
私はこれから
師匠から受け継いだものを
具現化していかなければならないと
改めて言われたようだった

Long Peaceの実現には
きっとまだまだ
時間がかかるであろう

でも
私たち人類は
いつかきっと
そんな未来を実現できるはずで

そのためにも
私が今できることに
取り組むべきなのだと
対話を交わした
短く
幸せな時間であった

La Carrière -Mariko