大雨の恐怖

各地で水害のニュースを耳にするが
私の住むメキシコでも
豪雨や洪水が
たびたび起こる

過去、山であり
木や森に覆われていた地域を
開拓してきた結果

治水能力に問題があり
街の中でも
決まった場所に水が貯まり込むのである

かくいう我が家も
水の問題に悩まされている

先日帰宅の途中
大雨に出くわした
ものすごい勢いの雨と
正面から襲ってくる雨水

洪水というのは
こうやって起こるのだと
痛感した瞬間であった

縁石を見ながら
比較的高さのあるところで
車を停止させた

家まで
あと数ブロックと言う場所である

夜遅い時間であったが
待つしかなかった

ヘッドライトを消し
音楽を止めて
冷房を切り
停止を後続車に知らせるハザードだけで
ひたすら
雨が小降りになるのを待った

私のすぐ前と
後方にも
同じ様な車が何台かあった

天気予報を見ると
雨は一晩中降るとのこと
23時ごろ一瞬弱まるとあったため
辛抱比べとばかり
ひたすら、待った

しばらくすると
縁石がさっきよりも
見えるようになってきた
少しばかり水が引いたようだ

ここぞとばかりに
数台の車が反対車線や
横切る場所で
走って行くのを見ていると

私と同じく
セダンやハッチバックも
過ぎ去って行く

ここで止まり続けるか
それとも家まで帰るか
私は心を決めた

宇宙なのか神なのか
車をつかさどる人たちなのか
私は無事の帰還を祈り
走り出した

恐怖と闘うこと数分

私は自宅に辿り着いた

自宅駐車場も
少しばかり浸水しており
裸足で
駐車場から脱出した

大雨が怖いことは
知ってはいたが
知っていることと
経験することとの差は
雲泥の差である

恐怖を乗り越え
無事に自宅に辿り着いたが

同時に
何かを知ることと
経験することが
全く違うことが

こういうことなのかと
実感した出来事でもあった

大雨の恐怖は
経験する必要のないものだが

何事も
経験を通じて学びがあることを
改めて痛感した
雨の夜であった

La Carrière -Mariko