モクテスマの復讐

メキシコという国で生活していると
必ず年に一度や二度ほど
お腹を壊す

正直原因はよく分からない

細菌性のものなのか
バクテリアのものなのか
生水からなのか

とにかく
食あたりや水あたりを
起こしてしまうのだ

これを人々は
モクテスマの復讐
スペイン語では
Venganza de Moctezumaと呼んでいる

西暦1519年
スペインからやってきた
征服者エルナン・コルテスが
メキシコへ上陸してきた

その後、征服者の手によって
メキシコの土地にあった
アステカ文明は滅ぼされる

コルテスがやってきたとき
アステカ王だったのがモクテスマであり
彼の恨みが
メキシコへやってきた外国人たちに
腹痛をもたらすと
言われているのだ

そのため
旅行者などが腹痛になる可能性は高く
住んでいる人たちも
メキシコ人でさえも
時折
腹痛に苦しむことになる

このように書くと
あまり綺麗な国の印象は
受けないと思うが

メキシコ人は
実は大変清潔である

四六時中
至るところで掃除をしている人がいる

トイレから出る際は
必ず石鹸で手を洗う

屋台や食べ物屋には
サニタイザーが必ず置かれている

彼らは
とてもきれい好きなのだ

水道水は残念ながら飲用に適してはいないが
小売りされている氷は
精製された水でできており
氷が原因で
お腹を壊すこともほとんどない

恐ろしいのは
何が原因かよく分からないため
油断をしていると
お腹を壊してしまうことだ

これがモクテスマの復讐である

このつらい腹痛でさえも
言い伝えや話のネタにしてしまう
メキシコ人の明るさに
完敗である

そういえば

私もかつて
一か月ほど
お腹を壊し続けたことがある

原因は
食べ慣れない物を食べたことだ

それは
昆虫である

その時はさすがに
モクテスマを恨んだが
食べ慣れないものを
食べてしまった私が悪いのである

尚、このときは
仕事での会食だったため
仕方なく口にしたが

それ以来
堂々と
昆虫類はお腹を壊すからと
断る理由ができたことだけは
ありがたい

メキシコにお見えになる際は
腹痛にお気を付けを

追伸:
とは言うものの
旅行で訪れてきた
私の家族や友人は
誰一人まだお腹を壊していないので
きっと
モクテスマには恨まれてないと
信じたい

La Carrière -Mariko