別れの季節

会計年度や学校の始まりなどが
国や地域によって違うのは事実だが

日本において
3月の終わりは別れの季節に違いない

桜が一瞬で満開になり
はかなく散っていく姿が
何よりも美しい時期でもある

今年の春は
親しい人を日本に見送った

同じく海外を飛び回る彼女が
ほんの束の間の休息とばかり
日本へ帰国する

どこに住んでいても
どこで生活をしていても
私たちは生きていくことができる

働くこと
家族と毎日を過ごすこと
友人との時間

思うようにいかないことも
願い通りにいったことも

人間の一生を考えると
すべてが一瞬のできごとである
この一瞬一瞬が重なって
それぞれの歴史となっていく

桜の花は
毎年、美しい花を咲かすことができるが
私たちも
毎年、何かしらの美しい花を
咲かすことができるはずである

そのためにも
成長するためのチャンスを見失わないことである

全ての経験の積み重ねが
人生を作り上げていくのだ
チャンスは毎日の中に隠れている

桜の木も
黙って立っているだけではない

桜餅に使われる桜の葉の香りを
思い出してもらいたい

塩漬けにされた桜の葉は
花のように甘く
少し、くせになるような
独特の香りを持つ

この香りの成分は
クマリンと呼ばれる物質である

クマリンには
周囲の植物の発芽や成長を抑える働きがある
桜の木の周辺に
雑草が育ちにくいのは
このためであると考えられている

桜の木は
毎日、生存競争の中にいるのだ
自力で動き
住む場所を変えることができない代わりに
自分の力で
自分の身を守ろうと必死に戦っているのだ

桜と比べると
私たちは何と自由なんだろうか

自らの力で住む場所を変え
生きていく場所を選ぶこともできる
つまり
美しい花を咲かせる場所を
自分の意志で決めることができるのだ

眠りに落ちるとき
私たちはその日に別れを告げる
そして
今日という日に出会うのが
朝、眠りから覚める瞬間である

別れの季節は
私たちが忘れがちなことを
思い出させてくれる
それは
平凡な毎日の中にしか
成長のチャンスがないということである

  

La Carrière -Mariko