NANA スペイン語の思い出

はじめてスペインに降り立ったとき
スペイン語とカタルーニャ語の区別すらつかなった

バルセロナはカタルーニャ語が話されているのだが
その言葉とスペイン語の違いにすら
気付けない状態であった

約一年半ののち
本屋で漫画を手に取った
当然ながら
スペイン語かカタルーニャ語の区別もついたし
いざ、読んでみようと思えたのだ

私はもともと
本を読むのが早い
漫画を読む速度はさらに早い

通常の三倍の速度がかかった

でも読んでいるうちに
胸が苦しくなったり
切なくなったり
悲しくなったり

自分の感情が疎くのが
手に取るように分かったのだ

この瞬間
スペイン語は
私の言語になった

訳す必要などない
分からない単語もたくさんある

それでも言葉が
自分の中に染み入ってくる

これが
言葉を自分のものにしたということだ

私が夢中で読んだのは
NANAである

日本でも読んだことがなく
始めてスペイン語で読み始めた

週末
平日の夜
夢中になって読み始めた

言葉が自分の中で
溶けていく

この感覚を
大人になって味わえるとは
幸せである

言葉は生き物である

学ぶことだけでは
手に入れることができないものでもある

私とスペイン語は
その時から
切っても切れないつながりとなった

もし語学で苦しんでいる人がいるなら
まず
一年でもいい
とにかく学ぶことだ

そして
一度漫画を手に取ってみるといい

その言葉が貴女に
語りかけてくることが
分かるだろう

言葉が心に刺さるという感覚を
味わえるに違いない

La Carrière -Mariko