本物を知ること

高い金額を出すことで
必ずしも
最高のご馳走を得られるわけではないのだが

本物の味を知ろうとすると
ある程度の投資が必要である

SUSHIは世界共通語でもあるが
日本の食文化にとって
重要な食べ物の一つである

世間が新元号で騒いでいる間だが
私の目に留まったのは
海苔の不作を伝えるニュースであった

今年は大凶作であるというのだ
暖冬による高水温と栄養塩不足の環境と
加えて東北タンカーのオイル漏れ事故の影響もあり
減産に歯止めがかからない

こうなると
不足分を輸入に頼ることになる

確かに、足りなければ
諸外国から買えばよいのだが
本当にそれが必要なものかどうか
その都度考える必要がある

日本の回転寿司でもなく
海外でアレンジされた寿司でもなく
本物の寿司屋で軍艦巻きを食べた時に
海苔の香りが握りの決め手であると
感じたことがあった

本物の海苔は
決してネタを邪魔しない

むしろ
すし飯とネタがうまく合わさるよう
味を引き立てるような潮の香りを
口と鼻の奥に届け
我々の味覚に働きかげるのである

このような味わいは
コンビニに並んでいる
おにぎりを包んでいる海苔から感じることは
まず、ない

寿司職人も
作品である寿司をより美しく
より美味しいものにするために
数ある海苔の中から
最も相性のいいものを選んでいるはずである

本当に職人が手塩をかけて作ったものには
魂がこもっている

たかが海苔と侮るわけには
いかないのである

足りなければ、外から持ってくるという発想が
悪いというわけではない

大事なのは
本物をきちんと手にしているのか
用途に合ったものであるのかどうかを
見極めることである

足りないからと言って
間に合わせで終わらせてしまっては
勿体ない

これは食べ物だけではない
私たちが身に着けるものも同じである

職人が愛情込めて作った一足の靴には
どれだけの想いが
込められているものだろうか

想像しながら
是非身に着けてみてもらいたい

もし気持ちが感じられないものであれば
今すぐ
手放した方がいい可能性もある

本物に触れることでしか学べないことが
必ずある

日常生活で
全てのものに投資をする必要は
決してない

たった一つでいい
本物を知ることができる何かを持つことは
人生の最強のパートナーになる

 

La Carrière -Mariko