ルブタンを磨く日

家の本棚の一角に
私のルブタンは
飾られている

飾りではなく
私が仕事中に
身に付けたりもするのが

ただの飾りとの違いである

オフィスへ行く機会が減り
出張へ行く機会も減り

ハイヒールと向き合う時
より二人きりになっていると
感じる

二人というのは
ハイヒールと私、ということである

というのも
外へ連れ出すと
当然ながら誰かに見られたり
誰かと会ったりするため
必然と足元が
ハイヒールと私という
二人だけの世界から
一機に第三者の目という
まったく違う世界へ
広がっていくからである

時折
私はルブタンを磨きながら
会話をするのだ

この相棒は
どれだけの人を
魅了してくれたのかしら、と

そしてルブタンはいつも
さぁね、と答えてくる

なぜなら
それは
貴女の歩き方に
かかっているのよと
ルブタンは
さらりと言ってくる

ルブタンが言うことは
いつも正しい

だから私は
今日も自分を
律そうと思うのであった

La Carrière -Mariko