階段を上っているとき
自然に目に入るのが
目の前の人の足元である
彼女のハイヒールは
すり減っていた
そして上がるたびに
かぽっと
軽く足が靴から抜けるのである
本人は慣れているのか
それが普通なように
階段をどんどん上っていく
かかとと靴の接点部分は
靴擦れの跡があった
こういう女性を見ると
きちんと靴のサイズを選び
歩き方を学びなさいと
声を掛けたくなってしまう
もちろん大きなお世話と
言われるのは
間違いない
市販品の靴が
足とぴったり合っている人は
稀であると思う
多かれ少なかれ
どこか合わない部分があるはずである
そして履いているうちに
皮革や伸縮する布であれば
伸びて、自分の形になっていく
けれど明らかに大きなハイヒールは
身体を痛める原因にしかならない
私の後ろ姿も
知らない誰かが
必ず目にしている
見えないからこそ
気を遣う
その言葉の意味を思い知ったと同時に
やはり
自分に合ったハイヒール選びが
いかに大切であるかを
思い知った
La Carrière -Mariko