褒める

義母を介護しながら
時間短縮労働の申請をして
働き続ける友人がいる

最近つらそうにしている姿が
目に焼き付いていたこともあり

彼女を夕飯に誘った

そして
ほどよく美味しいワインがまわったところで
彼女を、褒めた

貴女は本当に偉いよ
素晴らしく頑張っているよね、と

彼女はその言葉を聞いた瞬間に
何かが抜けていくような
表情を浮かべ
そのままそれは
涙となって
流れ落ちた

最近仕事が面白くなく
さらにつらいのだと言う

友人であり同僚でもある彼女
確かに傍から見ていても
大変そうである

彼女が言った

そもそも介護で
プライベート生活が台無しの中
プロフェッショナルの生活まで
何も得るものがなければ
私の人生は
何のためにあるんどあろうか、と

その言葉、気持ちに
私はただ寄り添うしかできなかったが

その気持ちは
痛いほど、分かる

仕事というのは
ありすぎても
少なすぎても
成立しないのである

彼女は介護で夜
義母に起こされることが
本当につらいと言っていた

そんな彼女にも
私が言えることがある

それは
仕事は絶対に
貴女を裏切らないけれど
会社や組織には裏切られる

私の中で
確固たる自信があるのが
この言葉、である

私も仕事で言えば
日本に帰ってきてから
ここにとどまるべきではないと
痛感するほど
仕事から面白さがなくなっているのも
事実であった

プライベートでは
上手くいく保証などどこにもないことに
敢えてチャレンジしており
答えがどこにあるのか
いつ出せるのか
本当に見えないことばかりで

プライベートもプロフェッショナルにおいても
どちらも
うまくいっているわけでは、ない

けれど

私には少なくともハイヒールがあるなと
どこかで思う

それはハイヒールそのものの存在もだが
こうして
世界各国のたくさんの読者であったり
ASAMI PARISの仲間であったりと
違う世界があることだ

これは味方によっては
プライベートライフの一部でもあり
プロフェッショナルライフの一部でもあるが

要は会社と家庭
それ意外の場所があることの
ありがたさを痛感したのである

ねぇ、たねちゃん
自分をもっと褒めてあげなよ

私は彼女にそう言った

彼女は私にこう返した
Marikoもね、と

褒めること

その効果を私はまだ
知らないのかもしれない

La Carrière -Mariko