脱げ掛けのハイヒールの貴女へ

雨の日の電車に
音を立てて乗り込んでくる
長身の女性がいた

美しい身なりであったが
一歩動くたびに
かたん、かたんと
足音が聞こえた

少し鈍ったような音であったため
足元に
視線を移すと
彼女のハイヒールは
彼女が歩むと共に
かかとが丸見えになっていた

つまり
彼女の靴の大きさと
足のサイズが
合っていないのだろう

彼女なりに
靴ずれや歩きやすさを
追求して
選んだ靴なのかもしれない

でも残念ながら
それは貴女の価値を下げてしまうこと
どうか
気が付いて欲しいと思う

ハイヒールは
本当に
女性を美しく見せる
魔法の力を持っている

ただしそれは
その効力が
きちんと発揮された時だけである

どうかそのことを
心にとめておいて欲しい

ハイヒールは武器にもなれば
凶器にもなる

美しく魅せるどころか
気が付くと
だらしなさであったり
もしくは気を抜いたような
姿をさらすことになってしまうのだ

雨の日のハイヒール

簡単にはけるものではないし
身に付けているだけでも
素晴らしいと思ったが

やはり

歩き方が大事なのだと
大声で伝えたくなった
電車の中であった

La Carrière -Mariko