スペインに住んでから
よく食べるようになったものの一つが
チョコレートである
私の幼馴染で
常にパフェと言えば
チョコレートパフェを食べていた友人がいるが
私にはその魅力があまり
よくわからなかった
チョコレートと言えば
濃厚な苦みや香りもだが
同時に甘さも濃厚で
甘すぎるものが苦手の私にとっては
苦手なものであった
ところが
バルセロナで住んだ家の斜め前に
老舗の有名なカフェがあり
そこの名物が
ザッハトルテだったのである
そこはデリとスイーツを
イートインもテイクアウェイもできる
お店でもあった
ザッハトルテはドイツ語である
(のちにウィーンに住むことになるが
なんとも奇遇な運命である）
スペイン語では
アルファベットをそのまま読むため
サッチャーなどと呼ぶので
それがザッハトルテと
気が付くまでに
相当時間がかかってしまったのだが
いずれにしても
このお店のザッハトルテが
フランボワーズのジャムが入った
爽やかさすら感じるような
濃厚なチョコレートのケーキだったのだ
それ以来
私はザッハトルテのファンとなった
それが縁なのか
その数年後に
ザッハトルテの生まれ故郷である
ウィーンに住むという
幸運を手に入れることになる
正直
毎日食べたい甘さではないが
ふとした時に
濃厚なチョコレートの味と
口の中を満たすような甘さ
そして
甘さを和らげるように
そっとやってくるジャムの酸味の組み合わせを
思い出す時ががある
とある食べ物との出会いや
縁というのは
おそらく
皆、何かしらあるのだと思うが
少なくとも
私のチョコレートに対する
気持ちというか価値観というか
態度を変えたきっかけは
ザッハトルテである
そしてこれがきっかけで
比較的甘いお菓子も
喜んで食べるようになった
パリに住むことになった際に
カフェやスイーツ巡りが
私の週末の楽しみにもなった
食べ物との出会いというのは
時に
人生の行き先さえも
決めるのだ
La Carrière -Mariko