長女という立場

記憶の一番古いものですら
私はお姉さんという
役割を担っていた

妹が生まれる前
父親が単身赴任していたこともあり
叔母と叔父の家に
預けられていた記憶だ

妹が生まれる直前
小さな子が
病院へも同行できなかったためである

つまり
自分の自覚がある限り
私はお姉さんでしかなく
一人だった記憶もなければ
生涯
妹になることも
できない運命ということである

姉妹の関係は
とてもありがたく
親からもらった
最高の贈り物が
妹だと言い切れる

けれども
一度くらい
姉妹の関係を
入れ替わってみたいと
思うのである

長女というのは
甘えるのが苦手で
しっかりするのが
当たり前とされているからか

私は人に甘えるのが
得意ではない

甘えるというのは
気持ちを許すということだけに
留まらず
何かをお願いする時も
同じである

一方で
ビジネスとなると
金銭が絡むということもあり
私は仕事なんだからと
人にお願いをすることを
普通にやっているではないかと
思い返すのである

それにある日突然
気が付いた

先日親友が
ホテルから自宅への引っ越しを
手伝ってくれた

彼女がいなければ
私はタクシーで移動するしかないと
考えていたほどである

彼女はとても
心配りが上手く
手伝ってあげるよと
自分から申し出てくれたのである

もし彼女から申し出がなければ
私は自分の考えに従い
タクシー代を払って
引っ越ししていたに違いない

私が長女であることを
彼女は多分、悟っていたに違いない

彼女は三人姉妹の
末っ子である

助けを必要とする人の
心を察してくれるのである

そういえば
私の別の親友もまた
三女であったなと
ふと、思い出す

そして彼女も
私に対し
もっと人に甘えていいんだよと
事あるごとに
言ってくれている存在である

長女という生き物を
よく理解している女性の友人に
私は何度も
助けられてきたのだと思う

こうしてみると
生れた時に
兄弟姉妹がいることは
ある意味運命なのかもしれないと
思える

その人の生き方の一つを
決めてしまう要素でもあるからだ

もちろん
それが全てではないが

育ってきた環境から受ける影響の
大きなものの一つであると
言い切れるだろう

La Carrière -Mariko