心に残る
贈り物というのは
人によって
もらう物によって
違いがあると思う
しかし
誰もが喜ぶものの一つが
メッセージビデオではないかと思う
メキシコを出る時に
部下たちが
秘密で作ってくれた
メッセージビデオ
私は空港へ向かう
6時間あまりの車中で
そのビデオを見ながら
涙が止まらなかった
私が会社を出るのを
見送って
そのあとに
わざわざ
サプライズで送ってきた
ビデオは
私の部下たちからの
渾身の想いが詰まっていた
人生の師匠として
貴女のことを
忘れませんと
叫んでくれた部下や
雨の中
わざわざ見送りのためだけに
バイクで会社までやってきたスタッフ
これからも連絡を取り合いたいと
最後にメッセージを交換した人や
涙ながらに
見送りに来てくれた人たち
全ての人からの
あたたかい言葉が
私を包み込んだ
心を動かされる瞬間というのは
予想はしていたものの
正直それは
想像をはるかに超えて
私の心を揺さぶるものであった
オフィスを出る時
部下や上司は関係なく
その場にいた
全ての人たちが
拍手で送りだしてくれた
その時の感情は
言葉にするのが
難しい
ただ
彼らに、さようなら、ではなく
またね、という言葉を
残そうと
それだけであった
号泣しながら会社をあとにして
今度はサプライズで
さらに泣くことになるとは
なんとも私の部下たちは
たくましく、そして優しい
愛に満ちた人たちなんだろうかと
我ながら
スタッフに恵まれていたことを
痛感させられた
メキシコのスタッフたちは
こうやって
何人もの人を
見送ってきたに違いない
私も彼らの遠い記憶の
一人になるのであろう
そうだったとしても
こうして
共に時間を刻んだ日々は
今日の私につながっていることを
私は生涯
忘れないだろう
日本に帰ってから
メッセージビデオを
見返しながら
私の中で
彼らに何が残せたのか
自問自答をしながら
今度は微笑んでいる自分が
いることに気が付く
忘れることは
人間の最大の能力だと
私は知っている
もし
辛い別れを忘れられなければ
私たちは
一生辛い思いにばかり
気持ちをフォーカスしてしまう
でも忘れることができるおかげで
辛い別れも
今となっては
思い出の一ページへと
変換させることができるのだから
人生の様々な出来事に
意味のないことなどない
私のポリシーでもある
だから
今日こうして
忘れることと
思い出のことを
ちょっとだけ
書いておこうと
思ったのである
La Carrière -Mariko