不思議な夢

ある日
私の右腕でもあるスタッフから
夕飯に行こうと
誘われた

いいよ、ともちろん
返事をしたのだが
どうして?と聞くと

夢を見たからだというのである

ちょっと面白いなと思いつつ
聞いてみると
同じ列車に乗っているのだけれど
お別れしないといけなくなるのだという

そして
それがあまりにも
悲しすぎて
悲しくて悲しくて
目が覚めたのだと
彼は言った

居なくなることは分かっているけれど
そういう悲しみを
夢の中でも味わってしまったから
今の時間を大事にしたいんだ

彼は私にそう告げた

なんだかとても泣きそうになる

彼はこんなにも私のことを
想ってくれていたのか、と
なんだか
嬉しいようなつらいような
複雑な気持ちである

彼は本当に優秀で
心も優しい

英語が苦手だが
将来有望な人材の一人だと確信している

だから
結構きついことも言った
そして
大変なことも
乗り越えてきた

悲しいけれど
事実
私はそろそろ
ここを離れる準備を
しなければならない身分である

でも
彼と働いた日々は
私と彼の中に
一生残り続けるのだろう

私だって
ここを離れるのは、悲しい

そしてそれが
形となって
彼の夢に降りるとは

なんだかとても
感慨深い事象であった

普段頭と心が
考えていることや
無意識のうちに思っていることが
夢になって出てくることもあるものだと
痛感させられた

私の後任の自宅に
彼への贈り物を
通販で買って送りつけた

名前入りのお箸と印鑑である

日本に彼が来ることも
そのうちあるだろう

私は彼に
日本人と働いてよかったなと
思ってもらえるのであれば
本当に本望だなと
思っている

日本という国の
良さも悪さも

こうして外の国から見てみると
よく
分かるものである

そんな中
私は敢えて
日本に帰り
自分自身と向き合うと決めたのだ

だから日本の文化のかけらを
彼に少しでも
届けたかったのである

夢の中でのお別れの先には
世界のどこかでの
再会が
待っているに違いないと思う

La Carrière -Mariko