学生時代
私は旅行に明け暮れた
それは
自分が住んでいる世界
見ている世界が
もっと広がるのではないかと
思ったことがきっかけである
私は今も趣味でバイクに乗っているが
自転車ではなく
いわゆる大型二輪自動車のことである
これは学生時代の思い付きから
今に至っている趣味でもある
体力が人よりあるわけではない私が
自転車で日本全国を旅するのは
現実的ではなかったため
一番安く
自分の力で
好きなところに
好きなところへ行ける道具として
バイクを選んだのである
日本は全県訪問歴があるが
学生時代は西日本を中心に
基本的には旅に出た
道ですれ違う人と交わす挨拶や
旅先で出会うライダーたち
ナンバープレートで
京都から来たことを歓迎してくれる
地方の人たち
海外からわざわざ日本に
バイクを乗りに来ている外国人にも
旅先で出会った
一期一会の出会いが
そこにはあった
実は日本人だって
本当は皆、親切で
誰にでも話しかけられるではないかと
実感した旅の日々でもあった
転倒して困っていると
必ず誰かが助けてくれた
道に迷っているときも
知らない人が
さりげなく助けてくれた
多分これが
昔の日本人が持っていた
粋、なるものなのかもしれない
多分私たちは
アナログな時代は
もっと美しくあることに
懸命だったのだと思う
それは外見もだし
心の持ち方も同じく、である
人と合わせるということを
是としてきた日本の文化に
急にインターネットが入り込み
“合わせる”
行為が一気に広がっていったことで
こういう粋な心とか
生き方みたいなものを
忘れてしまっているのではないかと思う
20年前はもっと
自由な世の中だったと思う
いつの間にか
合わせることを強制し
他人を監視するような風潮が
当たり前になったように感じる
その結果、よくわからない批判や
風評みたいなものに
流されることになっているのではないだろうか
昔に戻れとは思っていない
でも
多分私たち日本人が持っていた
粋と呼ばれる
美意識の一種を
取り戻さなければ
この国はますます生きにくくなると思う
それは
見ず知らずの他人を助けたり
他人を信じることであったり
自分のスタイルを貫くことであったり
するのではないかと、思う
私がハイヒールをわざわざ履くことを
良く思わない人もいるかもしれない
でも
私は自分のスタイルを
貫きたいだけなのだと、思う
ハイヒールが身体に悪いという意見に
合わせる必要など、ない
粋な美しさは
その人の生き方に表れる
人生そのものが
芸術でもある
私も、粋な美しさを纏える
人になっていきたいと
旅の日々の記憶と
ハイヒールを眺めながら
自分を見つめ直すのであった
La Carrière -Mariko