好きだった小説と、また向き合う

やたら凝った料理を作りたかった
時期がある

海外に住んでいる時
どうしても食べたいと思うものを
自分の手で作るのは
当たり前だと思っているが

その料理が
やたら凝っているものであったり
時間がかかったり
手間がかかるものであることが
時折ある

それでも食べたいという思いから
作ってきたのは事実なのだが
最近ふと
そうした創作意欲の矛先が

料理だけではなく
書くという行為に
向かっている気がするのである

料理を作っている時は
終わりをイメージする

調味料が手に入らないこともあれば
思ったような味に仕上がらないこともあり
最終的に調整をしなければ
イメージしている味に
近づけない

一方で
書き物をしているときは
終わりが決まっていることもあるが
書きたいことが決まっていて
終わりが決まっていないことの方が多い

書きながら
登場人物が
頭の中で活動しているのを
書き写している
という感じである

創作意欲に満ちている時
自分は別の世界に生きているのではないかと
錯覚するような
感覚に陥るものである

そして何かを考えているというよりは
降ってくる何かを
書き記さなければという
想いに駆られるのである

これからは
こうした創作の時間を
もっと持てるような
生き方をしたい

人生の時間は
限られていることを
忘れてしまいそうな毎日だが

作品を書ききれない後悔だけは
しないようにしたい

料理にも手間暇をかけるが
私の創作意欲は
こんなところで
止まっていては
いけないと

頭の中で
鐘を鳴らしている

La Carrière -Mariko