理想は
ハイヒールで
走らず
あせらず
生活をすることである
しかし
時にハイヒールで
走らざるを得ないこともある
空港で搭乗口が突然変更になった際や
乗り継ぎのフライトがあるのに
遅れてしまった時
何かしらの手違いで
ホームを間違ってしまった時などである
もちろん
このようなことが起こらないように
気をつけてはいるものの
時には
偶然にも
起こってしまうというものである
あれほど
ハイヒールで走らないと決めたのに
仕方なく、走る
その時ほど
情けなく
ハイヒールという生き物が
私の体の一部ではないことを
思わされることはない
そう
ハイヒールは
走るために生まれてきたのではない
美しく魅せるための
いわばツールなのだ
日本で
新幹線に乗り遅れそうになった日
ハイヒールで階段を駆け上がった
とても親切な人が
大丈夫ですかと
声をかけてくれた
ハイヒールで駆け上がる私の姿は
悲壮感ただようものであったに
違いない
私はできる限り
平静を装うのであった
そう、二度と走ってはなるまい
それはハイヒールと私の間の
約束みたいなものでもある
La Carrière -Mariko