味覚ではないけれど、辛さを好む人々

メキシコ人たちは
子どもの頃から
辛い物を習慣的に食べて育つ

中には辛いものが苦手な人もいるが
大半の子どもたちが
チリの入ったお菓子などを
気がついたら食べるようになっている

人間にはすぐれた味覚がある

しかしいわゆる辛味成分は
味覚ではなく痛みなのだという

舌にある、温度に対する受容体を持った細胞が
ある一定の温度を超えたり
逆に下がったものに対して
反応することにより
痛みとして認識され

その刺激を
味のように錯覚するのである

しかし一方で
その辛味以外にも
チリにはたくさんのアミノ酸や栄養が含まれており
確かにただ辛いだけではなく
うま味を与えているのも事実である

中国からやってきた来客を迎え入れ
メキシコ人と中国人で
テキーラの乾杯合戦と
(一言申し上げておくと
本来テキーラは
このように飲むものではない)
辛いものにどちらが耐えられるかの勝負をしたのだが

圧倒的に中国人が勝ち
メキシコ人チームは敗退に終わった

辛味に強い人たちは
世界にまだまだいるのだと
メキシコ人チームは
次回までに鍛えておくと
意気揚揚である

辛いものが好きな人は多い

過去、味覚が発達してきた歴史は
どちらかというと
生命の維持のためであり
甘味を感じる味覚が
最も発達しやすいのも
その理由である

私たち人類は
身の危険を身体が教えてくれているというサインですら
味覚として錯覚してしまうようにできているのも
不思議なことである

そして辛さまでもを味方につけた人類は
どのような進化を遂げるのだろうか

目の前で
明らかに匂いがすでに辛さを訴えている
ハバネロ入りのタコスを食べる
同僚を眺めながら
そんなことを思うのであった

La Carrière -Mariko