足にハイヒールが馴染むとき

ハイヒールというのは
生き物である

大きいか、小さいか
もしくは
きつく感じるのか
ゆるく感じるのか

最初の印象は人それぞれであろう

あまりに大きすぎたり
小さいすぎるものは
決して身に着けるものとして
選んではいけないが

革でできている靴は
伸びるものである

そして
生きている靴とのお付き合いは
初めて足を入れた瞬間から
始まるのだ

私は重度の外反母趾持ちである
(大切なことなので書いておくが
ハイヒールと出会う前からである)

だから、幅が細いハイヒールと
お付き合いすることは
大変時間もかかり
難しいことでもある

しかし
時間をかけて履き続けていると
ある日
自分の足とハイヒールが
阿吽の呼吸で
一体となっていることに
気付くことがあるのだ

時間はかかるが
足とハイヒールが
馴染んでいくのである

ヨーロッパブランドの靴は
一般的に
横幅が狭いものが多い

クリスチャンルブタンも
同じく
決して横幅が広いものではない

しかし
ある日から
私の足とルブタンが溶け合い
脚を軽やかに運べるように
一歩を強いものにするように
一体となったことを
感じるようになった

ハイヒールと付き合うことは
このようなことが
起きるものである

そして
しばらく遠ざかっていると
拗ねてしまったかのように
革が硬くなってしまうこともある

ハイヒールは生き物なのだ

貴女の愛情を受け
導きたい方向を示すことでしか
ハイヒールと仲良くなることは
難しい

ハイヒールが足に馴染む時
それは
貴女とそのハイヒールが
互いの愛情を交わし合った瞬間でもある

La Carrière -Mariko