フランス行きの切符をくれた上司と
8年ぶりに再会した
彼は私をフランスに送り出した後
数年を日本で過ごしたあと
インドネシアへ行き
ずっと海外で過ごし
ようやく日本へ戻ってきたのである
フランスへ行く話を
持ってきたその人は
正確には上司の上司であった
私が行くと決断したにも関わらず
悩み過ぎて眠れず
会社を休んだ日の朝
風邪っぽいと聞いたけれど
大丈夫かと
上司が付いてくれた
明らかに嘘と思える私の休みの理由を
察したかのように
連絡をくれた
35歳、独身、彼氏なし
少し古いが
日本の世間の言葉を借りると
負け犬、とも言われる
結婚するかどうか悩んでいたけれど
結局別れたあと
海外の大学院に行くべきかと
悩んでいた時に
フランスへ行くというチャンスをくれた方は
私がフランスへ行くということに
YESというだろうと
彼は思っていただろう
そして
それに対して
私もYESと答えたのだが
心の中での葛藤が
あることに
気が付いていたのだと、思う
私はフランスに行きたかった
でも行くということに対して
恐れがあったのだ
それは
見えない未来への恐れ
であった
かしくも東日本大震災が起こり
人々はさらに
不安と恐怖の中で
生活を再建することとなった
年でもあった
私はフランスに行き
その私が
今の私の一部となっている
フランス行きの結果
夫を得ることができ
その後メキシコで
仕事をする機会も、得た
そんなことを思い出しながら
8年ぶりの再会を
味わった
あの時の私に
今の私が、語り掛ける
フランスに住めて幸せだったし
良い決断だったと思うわ
と
あの時フランスへ旅立つための
切符をくれた
その人に
心からお礼を伝えたい
La Carrière -Mariko