綺麗な靴、丁寧な接客

偶然出会った
その香りを
手に入れたいと思った

それは何かしらの
衝撃にも近いような
香りの経験であった

アルゼンチン帰りの友人が
紹介してくれた
新しい、香りであった

その衝撃に
久しぶりに
新しい香水を
身に付けたいと思い
香水を求めて
都内のデパートメントストアへ
足を運んだ

ここには
もちろん
ルブタンの店舗も、ある

化粧品フロアで
店員を待つ間
行きかう女性たちを
眺めていたのだが

ピンヒールを
身に付けている人が
皆無であることに、気が
夏という季節もあるだろう

サンダル姿であったり
多少ヒールがあっても
ある程度太さのあるヒールを
身に付けている人が
目の前を行き来した

女性の店員ですら
足元のローファーは
若干残念な感じがしていた

私が所望した香水は
FUEGIAという
南米アルゼンチンが
オリジンのものだが
現れた店員は男性であった

男性はとても丁寧に
接客をしてくれ
私は希望していた製品を
手に入れることができた

お会計などの対応中
ただ
待っていたのだが

待ちながら
人々を眺めつつ
本当にハイヒールは
日本から消滅してしまうのではないかと
ふと思ってしまう

男性の店員に見送られながら
私はハイヒールで
一歩を踏み出した

視線を足元に移すと

男性の足元は
普通のローファーであったが
磨かれた靴であった

私の足元も
磨かれたルブタンであった

やはり
綺麗な靴を履いている人は
違う、と
自己満足にも見えるが
そんな思いを抱いた
出来事であった

ハイヒールであることを
稀有だと思われないような
文化が根付くと良いと
頭を過った

La Carrière -Mariko