メキシコの桜とも呼ばれる
ジャカランダ
この花が一斉に咲くのは
3月から4月にかけてであるが
紫色の美しい花が
木や街を彩るとともに
桜と同じく
舞い散った花びらが
地面を紫色に染めるのである
ジャカランダを見ると
一人の歴史上の人物を思い出す
その人の名は、松本辰五郎という
日本の学校の授業で習うことも、まずないであろう
彼はメキシコへの日本人移民の先駆者でもある
彼はメキシコに定住する以前に
庭師としてペルーなどで働いてきた実績を持っていた
実はメキシコにこのジャカランダを持ち込んだのが
彼、松本辰五郎その人である
松本は当時の大統領に進言をしている
街の主要な道路に
ジャカランダを植えてはどうか、と
そしてその結果
メキシコの主要な街、主要な道路
そして今では至るところで
ジャカランダを楽しむことができるようになったのだ
彼が亡くなってから60年強が経つが
美しいモノが人の心を捉えるという事実は
不変である
花は
人の心を捉えて離さない美しさを
生まれつき持っているように見えるが
人と同じく
年月を重ね
ある程度の高さに育って初めて
花を咲かせることができるのである
美しい花を咲かせるためには
日々の暑さや寒さ
雨や嵐に打ち勝つ必要がある
私たちにも同様に
年月を重ねたからこそ
手に入れることができる美しさがあるのではないだろうか
キャリアについて語られるとき
若い人に
注目が集まりがちだが
年月を重ねたからこそ語れる
キャリアが必ずある
松本辰五郎が残した花は
そんなことを思い出させてくれる
日本を飛び出し
世界で活躍した先駆者のことを思いながら
この美しい花が
日本人によって、ここ、メキシコに
もたらされた事実に
改めて敬意の念を抱くのである
メキシコに住む人は
この花を見て、春を感じるのである
美しい花に、国境はない
美しい人生を歩もうとする人にも
同じことが言えるのだと
信じてやまない
La Carrière -Mariko