急に命じられた
取引先の女性活用プロジェクトで
私は
実は世の中の多くの女性が
一般職を
好んで選んでいるということを
目の当たりにした
それは私の想像したことがない
世界との出会いでもあった
周りと合わせることができなかった私は
自分は自分であると
軸を確立させていたが故に
知らない世界がそこにあったことにすら
気付かないでいたのである
周りに合わすことができなくても
なぜ合わせられないのか考えたり
周りを見渡す能力が
足りなかったのだと思う
現に
活躍の場を作ったとしても
必ずしも
彼女たちが
そこで、活躍したいと
思っているかどうかは
別なのだ
人によっては
面倒くさい、と思う人もいる
それが
彼女たちの人生に
どんな意味をもたらすのか
正直、私も手探りであった
準備期間
実際のプロジェクト期間は
だいたい2年か3年か
やっていたと思う
プロジェクトの一つ目の山場は
2年目の、表彰式であった
そのプロジェクトを通じて
優秀な成績を収めた
女性スタッフを集めて
表彰式をすることになったのだ
そしてその表彰式の場で
上位の数名が
そのプロジェクトの成果を報告する
ということになっていた
私はそこで
発表に向かう女性たちが
涙目になりながら
必死になって
自分の成果を話す姿を、目にした
地方都市で育ち
ずっと地元から出たこともなく
とりあえず短大を出て
とりあえず、働き始めたという女性が
話し始めた
話している足と指先が
震えていた
思わず観客も
同じように手に汗を握ってしまうほど
彼女はガタガタに震えながら
さらに
声も裏返りそうになるのを
必死で抑えながら
懸命に話していた
こんなことを
私が人前で話していいのだろうかと
悩み苦しみながらも
話そうとしている心の葛藤が
こちらにも伝わってきた
それを乗り越え
自分の想いのたけを
恥ずかしそうに
けれども
誇り高く
話している姿は
本当に美しかった
彼女は泣いていた
泣きながら
まさかこの私が
誰かの前に出て
お話をする機会に恵まれ
こんなに素敵な場所で
食事をする機会に出会うなんて
想像もしていませんでした
これまで働いてきて
本当に良かったです
これからも頑張ります
と締めくくった
私の知らない世界が
目の前に
すぐそこに、広がっていた
周りに合わせるという言葉が
正しいとは思わないが
なんとなく学校を出て
とりあえず生きるために
働き始めた人が
仕事や日々の積み重ねを通じて
変貌を遂げていく瞬間を
私は目の当たりにした
どんな人であっても
変われるのだ
ただ
きっかけがないだけだ
私はそのことを
このプロジェクトから学んだ
女性の従業員に
活躍の場を考えるという
宿題の答えは
活躍の場を与えるというよりは
変貌するための
きっかけを作ることだった
私はこの仕事を通じて、学んだ
変貌すること
変わること
変化をすること
そのすべてが
人間としての成長につながるということを
教えてくれたのは
私が長い間避けていた
女性たちであった
女性活用なんて
失礼な言葉はごめんである
活用される、活用するではなくて
女性たちだって
変わりたい気持ちは
必ず皆、持っていたはずだ
そして
変わるきっかけは
仕事だけではなく
家事や子どもたちの習い事での活動
他の付随する日常の中に
必ずあるはずなのに
気が付かないでいるだけなのだと
このプロジェクトを通じて
そう、悟ったのである
La Carrière -Mariko