女はみな、女優である

ここのところ
出張に加えて
来客対応があり
連日会食が続いていた

出張の準備もある中で
貴重な時間を会食に費やすのは
若干疲れるという思いもあるが

夕食時に来客を案内しながら
メキシコの魅力を再認識するのも事実である

そして来客たちに
メキシコについてくる前に思っていたイメージと
来て感じるイメージと
違ったかどうかを聞くと
ほぼ100%の確率で
違った、という答えが返ってくるのである

背が高いサボテンが街中にあるわけでもない
ソンブレロと呼ばれる
つばが大きく、先の尖った帽子を
誰も彼もが被っているわけでもない
テキーラはお酒の強さの勝負のものでもなければ
タコスだけがメキシコ料理なわけではない

そんなことを感じてもらいながら
この国の良さを
改めて思い知るのである

せめてオフィスの外だけは
女性でいるべきである

これは私とASAMIさんとの約束でもある

仕事でどうしても
ハイヒールを身に付けられない
私だからこその
約束でもある

ハイヒールが履ける場所でなくとも
女性らしさを出す方法は
いくつもある

しぐさであったり
動作であったり
言葉遣いであったり

それぞれに気持ちを込めることで
人は女優になれる

女はみな、女優なのだ

今日という日を演出するために
朝起きて、自分の顔に化粧をする
リップを塗り
気分で衣装を選んだり
アクセサリーや持ち物を変える

これはすべて
演出の一つなのだ

私が私であるために
必要なことは
人みなそれぞれ、違う

家を出た瞬間から
女優の朝は始まる

コーヒーカップを持つ手
パソコンを触る指先
電車の中で立つ姿や
オフィスで座る姿

その一つ一つが
女優の仕事なのだ

オフィスに好きな人がいるから
もしくは
素敵な人がいるから
その人によく思われたいというのとは
これはまた
違う感覚である

他人からどう見られたいのか

それを考えながら行動をするのが
女優というものである

La Carrière -Mariko