同じ年のクリスマス休暇に
日本、南アフリカ、ブラジルから友人たちがやってきた
一度、仕事の都合で海外に住み始めると
国間の異動もあるため
同じ国で、同じタイミングで働くことがほとんどなく
なかなか会うことが難しい
休暇を合わせ
誰かが住んでいる国に集まることは
数少ない楽しみでもある
彼女たちは、我が家に入るなり
飾りとなった
クリスチャンルブタンを見て
歩いてみたいと
言い出したのだ
全身が映る鏡を見ながら
赤いソールを眺めつつ
脚がきれいに見える
いい気分になれる靴ね
などと言い合ったあと
こんなに綺麗な靴なのに
使わないんだったら持って帰るわよ
もったいない
靴が泣いているよ
かわいそうだわ
と口をそろえて言うのである
そう言われても
歩き方が分からないからのだと
心からの言いわけをしながら
内心、靴が本当に持って帰られないか
気が気でなかった
彼女たちの言葉は
確かに、一理ある
玄関という場所に居るのに
外に出られない靴は泣いているのかもしれない
私はこの美しい芸術品のことを
もう少し大事にしなければいけないと気付かされた
そして、とあることを思いついた
ハイヒールの歩き方を教えてくれる人を探せばいい
パリには絶対にいるはずだと思った
ファッションの国、フランス
モデルが職業としてもっとも輝く土地
歩くことを職業にしている人がいるのであれば
それを教えている人が一人くらいはいるだろう
そしてインターネットを通じて出会ったのが
ASAMI-PARIS-という場所であった
今となっては懐かしい思い出の一つになるが
ハイヒールを初めて買ったことについて
好意的に受け止めてくれたことを
とてもよく覚えている
その日を境に
ハイヒールを身に着けることでしか手に入らない魔法を
私は手に入れることに夢中になった
そして今日の私が、ここにいる
La Carrière -Mariko