足を入れるのが、心地よい

出張時にかかさず身に着けている
黒のルブタンがある

いつしか
このルブタンと一緒であることが
当たり前になった

高さは85ミリである

走る気はないが
いざというときに、逃げられる
高さにしている

そう、いざという時に
逃げられるというのは
とても心強いことである

特に強盗や犯罪の多い町では
自分の足を信じることは
とても大事なことである

ハイヒールで出かけると
気分がいいだけではなく
自分自身のレベルが
一段上がったような気もする

最初は幅がきつくて
一日履いて歩くのがつらいのが
私とルブタンの関係である

長い時間をかけて
足とルブタンは
仲良くなっていく

一日履いてもいいよと
ルブタンが許可を出す日は
毎日の積み重ねの結果である

足を入れるのが心地いいと感じるのは
ルブタンが私を許容している証拠である

歩き方を誤らないこと
一歩一歩を大事にすること

それらが当たり前になった時
はじめて
私とルブタンが
仲良くなるのだ

心地よさを得るまでに
時間がかかったとしても
そんな日が来ると
知っているからこそ
耐えられるのである

新しいルブタンを
また
手に入れたい

La Carrière -Mariko