私が病院の予約をしようと
自分のことで
いっぱいいっぱいだったその日は
月に数回しかない
出社の日でもあった
ある意味その出社は
私の心を救っていたとも言える
仕事をしている間は
少なくとも
病気のことを
考えなくて済むからである
そしてその日
奇遇にも親しい同僚の一人と
一か月振りくらいに
オフィスで顔を合わせたところ
お守りを買ってくれたらしく
彼女から思いがけず
贈り物をもらった
私が妊娠したことを知り
流産してしまったことから
また幸運が降ってくるようにと
想いの詰まったお守りであった
その時
彼女に思わず
自分の身に起きたことを話したが
それを聞いた彼女が
私の心の支えになってくれた
夜自宅に帰ると
今度は遠くに住む友人から
妊娠したと報告があった
おめでとうと返したが
これがまた
本当に
つらかった
嫉妬の気持ちはもちろん
なぜ私にはチャンスが巡ってこないのか
などと
悔しいような悲しみのような
気持ちが
私の心を攻めた
攻めてくる気持ちに
追い打ちをかけるように
私は自分の命がどうなるのか
母になるチャンスを失うのか
そんな疑問が押し寄せる
オフィスで再会した友人の支えがなかったら
私はつらくて
夜通し起きていたかもしれない
けれど
本当に
考えても仕方のない
最悪のシナリオというのを
自分で描いてしまっている自分が
恐ろしかった
脳科学の力を知っていても
実際の私が想像できたのは
最悪のシナリオだったのである
La Carrière -Mariko